どちらの場合も、脳は補正しようとする。
いま私たちにわかるのは、思春期の子は概しておとなよりリスクを好むということだ。
またティーンエイジャーのなかには、とくに大きなリスクを冒したがる子がいる。
アクセルを強く踏ませてしまう何らかの要因が働いているのだ。
「複雑な行動に、たった一種類の神経化学物質を結びつけるのは無理があるし、行きすぎた単純化になりかねない」だが、とRは続ける。
ドーパミンが少なくともジグソーパズルの1ピースである。
こうしたゲームを1000回以上くりかえして得られた結果を、高リスク志向の子と、リスク志向が正常な範囲の子で比較した。
すると前者はリスクの高い戦略を選んで、手持ちの金をすっていた。
Rは彼らを「報酬過敏」と表現した。
一度勝つと、もう同じ手は通用しないにもかかわらず、あと4、5回は同じボタンを押したがる。
いっぽう比較対照グループは、すぐに安全確実な勝負に戻り、最終的に多くの賞金を獲得した。
Rによると、報酬への過敏な反応と、過剰なまでのリスク志向は、明らかにドーパミンと関係があるという。
Rたちの研究は、ふだんはリスクを取らない人も、たとえばアルコールが入ってドーパミンが増えると強気になることを示している(L・Sの研究では、思春期のラットがむきだしの通路に留まったのは、アルコールを摂取したときだけだった)。
もちろん人間のあらゆる行動には、周囲の環境が大きく影響している。
だが同じ家庭に育ったのに、リスク志向に差がある子どもたちを調べたら、生物学的に奇妙な特徴が見つかった。
「極度にリスクを求める者は、ドーパミンのシステムに調節障害が起こっているのかもしれない」とRは指摘する。
ティーンエイジャーの正常な脳の働きを知ることで、彼らの向こう見ずで破壊的な行動を防ぐことができるのではないか。
そんな期待を込めた試みのひとつに、K大学で行動科学を研究するT・K教授の実験がある。
Kは、10代のとき高リスク・興奮志向と判断されて、現在18歳以上になっている男女を集めた。
彼らに興奮作用のあるアンフェタミンを投与してから、バスが暴走する刺激たっぷりの映画「スピード」を見せたり、オートバイで激しいチェイスを繰りひろげるテレビゲームをしてもらう。
Kが確かめたかったのは、ある種のスリルを別のスリルに置きかえることは可能かということだった。
スリリングな映画を見たときのハイな状態は、アンフェタミンの影響を弱めたり、それに取って代わったりするのか。
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